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相続手続きを期限ごとに時系列で解説
~手続きをしない場合のリスクも紹介~

相続手続きを期限ごとに時系列で解説~手続きをしない場合のリスクも紹介~

親族が亡くなると、相続関係の手続きを期限内に終わらせなければなりません。しかし、働いていたり遠方に住んでいたりする相続人が、慣れない相続手続きをスムーズに行うのは難しい場合もあるでしょう。この記事では、相続で必要な手続きを期限ごとの時系列にまとめたので、参考にしてください。

相続手続き全体の流れ

相続手続き全体の流れは以下の通りです。

相続発生から 手続き
なるべく早く
  • 遺言書の確認・検認
  • 相続人の確定
  • 亡くなった人の財産の調査
  • 遺産分割協議の開始
3カ月以内 相続放棄・限定承認
4カ月以内 所得税の準確定申告
なるべく早く(遺産分割協議終了後)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 預金・不動産・株式などの名義変更
10カ月以内 相続税の申告・納付

死亡から3カ月以内の相続手続き

相続人は通常、亡くなった人の財産を負債も含めて受け継ぐことになりますが、場合によっては限定承認や相続放棄を選択することもできます。相続放棄と限定承認は「相続があったことを知った日」から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりません。まずは、相続放棄と限定承認の期限までにすべきことを解説します。

遺言書の確認・検認

亡くなった人が遺言を残していた場合、相続の手続きは遺言の内容に従って行わなければなりません。見つかった遺言の種類が秘密証書遺言または自筆証書遺言であれば、家庭裁判所に検認の申し立てをします。公正証書遺言ならば公証人役場で認証済みであるため、検認の必要はありません。また、2020年7月から自筆証書遺言は法務局での保管制度が利用できるようになり、その場合は検認不要になりました。

相続人の調査

亡くなった人の法定相続人を確定するためには、相続人の調査が必要です。亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本を確認することで、婚外子や過去の婚姻でもうけた子が発覚するかもしれません。そのような法定相続人を除外して遺産分割をすると、後にトラブルになるおそれもあります。

相続財産の調査

亡くなった人の財産の調査も速やかに行います。主な財産の調べ方は以下の表のとおりです。

財産の種類 調べ方
預貯金 自宅金庫・貸金庫などに通帳・カードがないか探し、取引金融機関に残高証明書を発行してもらう
不動産 年1回送付される「固定資産税課税明細書」を探す
ない場合、市区町村の役所に「固定資産評価証明書」を発行してもらう(複数の市区町村に不動産がある場合、市区町村ごとに請求する)
生命保険 保険証券を探す
ない場合、保険会社へ問い合わせる
株式などの有価証券 証券会社などから送付される「取引残高報告書」を探す
ネット証券などでペーパーレス化されている場合、インターネットサービスで確認する
借入金やローンなど 金融機関からの借入は金融機関に問い合わせる
個人的な借金は借用書を探す(できれば生前に確認しておく)

相続放棄・限定承認

相続財産の調査の結果、借金等のマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続放棄や限定承認が選択可能です。相続放棄とは、相続の権利を一切放棄することを意味します。また、限定承認はプラスの財産を限度にマイナスの財産を相続することです。相続放棄は相続人が単独で行えますが、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。期限内に相続放棄も限定承認も行わなかった場合、亡くなった人のプラスの財産とマイナスの財産をすべて承継するものとみなされます(単純承認)。

死亡から4カ月以内の相続手続き

亡くなった人に所得があった場合、相続人が準確定申告を行わなければなりません。

所得税の凖確定申告

亡くなった人に事業所得があったり、アパート経営をしていて不動産所得があったりした場合には準確定申告が必要です。前年分の確定申告をせずに亡くなった場合は、亡くなった年の前年分と亡くなった年分について、準確定申告を行います。前年分の確定申告が済んでいれば、亡くなった年分について、準確定申告を行います。準確定申告は相続人全員(相続放棄をした人を除く)で相続発生後4カ月以内に行います。準確定申告が必要となる亡くなった人の条件は次のとおりです。

また、次のような人は準確定申告が不要です。

準確定申告が必要なくても医療費控除などで還付が受けられる場合は、準確定申告をしたほうが有利です。

死亡から10カ月以内の相続手続き

相続税の申告納付までの間、相続財産を引き継ぐ人を決めて、名義変更手続きを行い、相続税の申告・納付をもって手続きは完了です。

遺産分割協議書の作成

複数の相続人がいて遺言がない場合、遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決めます。遺産分割協議書の作成時は、どの相続人がどの遺産を取得するのか具体的に記載します。

また、相続人全員の署名押印がないと無効になるため注意が必要です。遺産分割協議後は、相続人各自が相続財産の名義変更手続きを行います。名義変更手続き時に必要になるため、遺産分割協議書は相続人全員分を作成し、各相続人が1通ずつ所持するとよいでしょう。

ただし、以下のようなケースでは、遺言があっても遺産分割協議書の作成が必要になります。

相続税申告・納付

相続税の計算では「3,000 万円+(600 万円×法定相続人の人数)」で算出される基礎控除を遺産総額から差し引くことができます。たとえば、法定相続人が配偶者と子2 人であれば、基礎控除は4,800 万円です。

つまり、遺産総額が4,800 万円以下なら相続税はかからず、申告も必要ありません。基礎控除を超える相続財産があれば、「相続の開始を知った翌日から10カ月以内」に相続税の申告と納付が必要です。相続税は現金一括での納付が原則となっています。

相続手続きをしない場合のリスク

最後に、期限内に相続手続きをしない場合に考えられるリスクについて解説します。

借金を相続してしまうリスク

亡くなった人の財産が債務超過であった場合、3カ月以内であれば相続人は相続放棄が可能です。しかし、期限内に手続きを行わない場合、相続人は借金を承継することになります。借金を相続したくない場合、できれば生前にマイナスの財産の状況を確認し、相続発生後に速やかに手続きができるようにしましょう。

預金の権利が失われるリスク

亡くなった人の預貯金の名義変更をしないで10年間放置すると、「休眠預金」として取り扱われ、預金保険機構に移管される可能性があります。また、長期にわたって放置していた預金が10年の時効にかかることになります。10年経過後でも払い出しに応じてくれる金融機関もありますが、預貯金を相続するなら、銀行の名義変更手続きを速やかに行いましょう。

不動産の相続登記をしないリスク

相続登記をしないまま時間が経過し、所有者の特定が難しくなった土地が増加することで、環境悪化やトラブルなどが社会問題になっています。そのため、法制度の見直しが進められ、2024年4月から相続登記が義務化されることとなりました。

相続によって不動産を取得した人が登記をしないと、取得した不動産を売却できません。また、第三者に対して所有権を主張することができなくなります。不動産を相続で取得したら、まずは登記手続きを行いましょう。

株式の名義変更をしないリスク

株式を相続した人が名義変更手続きをしないと、売却することができません。それだけでなく、配当の受取り、株主の権利の行使もできず、最終的には権利を完全に失うことになります。

相続税の滞納状態となってしまうリスク

相続税の申告が必要な人が期限内に行わないと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されます。税務署から督促状が送付されても放置し続けると、最終的には財産を差し押さえられる恐れもあります。相続税は期限までに申告・納付するようにしましょう。

分割協議がまとまらないリスク

相続税の期限内に遺産分割協議がまとまらないと、未分割のまま相続税を仮申告し、分割協議後に再度、申告書を提出することになります。未分割の場合は相続税の各種特例を受けることができず、納税負担が増える可能性があります。

相続手続きをスムーズに進めるためには生前からの準備が大切

相続の手続きは、限られた時間の中で進めていかなければなりません。相続人や相続財産が多い場合には、遺産の分け方がまとまらない、手続きをする時間が取れないなどさまざまなトラブルや悩みが生じる可能性があります。できれば相続発生前から、準備をしておくとよいでしょう。相続人だけで手続きをするのが難しい場合、第三者の力を借りることも選択肢となります。

相続手続きの準備で困ったことがあれば、信頼できる地元の銀行のサポートを受けるのも1つの方法です。

八十二銀行からのお知らせ
相続対策のご相談は八十二銀行へ

八十二銀行の「遺言信託」では、遺言書の作成・保管・執行を行います。当行が遺言執行者となり、遺言書に基づく相続手続き(解約・名義変更等)を行うため、相続人の方が限られた期間の中で遺産分割協議や各種手続きを行う必要がありません。円満な相続を迎えるためのお手伝いをさせていただきます。是非、ご相談ください。

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監修者

宮川 真一

税理士
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。
現在は、イセヤマグループの財務経理を担当しつつ、株式会社みらいパートナーズのM&Aアドバイザーとして、また税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。

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