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遺言書の正しい書き方
~相続で問題を起こさないためのポイントとは~

遺言書の正しい書き方~相続で問題を起こさないためのポイントとは~

自分の財産を自分の意向に沿った形で次の世代に引き継ぎたい場合、遺言書を書く場合が多いかと思います。しかし、正しい遺言書の書き方ではない場合、思わぬトラブルに繋がる可能性があるので注意が必要です。この記事では、遺言書の効力や有効な書き方を解説します。

遺言書の効力

遺言書は、自身が死亡した後の財産を誰にどのくらい残すのかを明確に示すことができるもので、相続人同士のトラブルを防止する役割を果たします。

またそれ以外にも、被相続人の遺志を反映できる以下のような効力も有しています。

遺言書のさまざまな効力についてひとつずつ確認していきましょう。

相続分の指定

被相続人に、法定相続分よりも多く相続させたい人や少なく相続させたい人がいる場合は、遺言書により法定相続分にとらわれず自由に相続割合を指定することができます。

相続人の調査

亡くなった人の法定相続人を確定するためには、相続人の調査が必要です。亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本を確認することで、婚外子や過去の婚姻でもうけた子が発覚するかもしれません。そのような法定相続人を除外して遺産分割をすると、後にトラブルになるおそれもあります。

たとえば、被相続人の遺産が3,000万円で、妻と子ども2人の合計3人いる場合で考えてみましょう。
法定相続であれば、妻が2分の1の1,500万円を相続し、子ども2人が残りの1,500万円を半分ずつ相続するのでひとり750万円相続することになります。

しかし、被相続人が妻と子ども2人に平等に遺産を相続させたいと考えた場合は、3,000万円を妻と子ども2人で平等に1,000万円ずつ相続させることができます。

遺産分割方法の指定

遺言書により、遺産分割の方法を指定することもできます。
たとえば、「長男には不動産を、長女には預貯金と現金を相続させる」といったように、特定の財産の相続人を指定するときなどに活用します。

ほかにも、「土地Aを売却して得た金額を子ども2人で平等に分ける」といった遺言も分割方法の指定に含まれます。

さらに、遺産分割方法自体を第三者に委託することもできますが、相続人の間でトラブルが起こるケースが多いので、遺産分割をスムーズに進めるためには控えた方が無難でしょう。

負担付き遺贈

まず「遺贈」とは、遺言書によって特定の人・法人に自分の財産を贈与することをいい、遺贈するにあたって一定の条件を付けたものを「負担付き遺贈」といいます。

よくあるケースとしては、「老後の介護をしてくれるのであれば預貯金を全額遺贈する」、「住宅ローンを半分支払ってくれれば自宅は遺贈する」といったことがあります。

負担付き遺贈は、遺贈を受けた人(受遺者)も一定の義務を負うことになりますが、負担が大き過ぎてしまうこともあります。そういったことを防止する目的で、受遺者保護のためのルールが設けられています。
具体的には、受遺者が負担するのは「遺贈の目的の価額を超えない限度のみ」に制限されることや、「負担付き遺贈自体を放棄できる」といったことがあります。

法定相続人以外の指定

原則として、被相続人の財産は法定相続人に相続されますが、相続人以外の人にも財産を残したい場合は、遺言に記すことで相続させること(遺贈)ができます。遺贈の相手は、内縁の妻や長男の嫁、介護でお世話になった人など、特に制限はありません。

遺贈寄付

遺贈寄付(いぞうきふ)とは、遺言によって自分の遺産の全部または一部を法定相続人以外の人または法人に寄付することをいいます。自分の想いを社会のために役立てることができるうえ、国や地方公共団体、認定NPO法人などへの寄付は相続税の節税にもなるというメリットがあります。

遺言書の種類

一般的に行われている遺言は「普通方式遺言」といいますが、普通方式遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

このうち、よく利用される「自筆証書遺言」「公正証書遺言」について、それぞれの特長やメリット・デメリットについて確認していきましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、最も簡単な遺言方法で、15歳以上の人で自分で記載することができればいつでも作成することができます。
作成方法は、本人が遺言の全文や日付、氏名を自書し、押印するだけです。

紙と筆記用具さえあればそれ以外に費用がかからないうえに、遺言内容を他人に知られずに済むというメリットがあります。

一方で、記載した内容を専門家に確認してもらうわけではないため、法的要件を満たせずに無効となる可能性があります。

なお、以前は自筆証書遺言の場合、遺言者本人が保管し、遺言者の死亡後に家庭裁判所の検認手続きが必要でしたが、2020年7月から開始された「自筆証書遺言書保管制度」により、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。

これにより、遺言を行った人は紛失や偽造の心配が不要で、相続人は遺言者の死後に遺言書の検認を受ける必要がなくなるので、相続手続きを速やかに始められます。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が公証人役場へ出向き、口頭で公証人へ遺言を伝え、公証人がそれをもとに遺言書を作成する方法のことを指します。

公正証書遺言を行う大きなメリットとして、遺言書が公証人によって作成されるため、法的な要件不備で遺言自体が無効になるリスクが少ないことが挙げられます。

また、自筆証書遺言のように、遺言書をほかの人に破棄されたり内容を変更されたりする心配もなくなります。
さらに、家庭裁判所の検認は不要なので相続手続きをスムーズに進められます。
しかし、公正証書遺言は公証人へ手数料を支払う必要があるほか、証人2名が必要で、証人を専門家等に依頼する場合は、証人へ手数料を支払う必要があります。
また、公証人や証人の前で自分の財産を明らかにしなくてはならないという点に不安を感じる方もいます。

財産内容を調査したり必要書類を用意したりするなど、手間や時間がかかりますが、有効性のある遺言書を作成したい人に向いています。

遺言書があっても遺留分を侵害できない

遺言書に記載されていることは、被相続人の遺志によるものなので、最大限尊重されるべきものです。相続人には「遺留分」が保障されており、たとえ遺言によっても侵害されることのない強い効力を持っています。しかし、中には相続人にとって多大な不利益となる内容が記載されているケースもあります。

遺留分とはどういったものなのでしょうか。

遺留分とは

遺留分とは、法定相続人に最低限保障されている遺産取得分のことをいい、兄弟姉妹以外の相続人に保障されている権利です。

基本的に、遺言書は遺言者の遺志を示すことができる大切なものですが、以下の例のようにあまりにも偏った内容である場合があります。

子どもが複数人いるにもかかわらず、相続できる人が限られていたり、財産のほとんどを愛人に相続させたりといった内容は、相続人からすると到底納得できない内容です。

このような場合に、遺留分を取り返すこと(遺留分侵害額請求)ができるのです。遺留分を侵害した遺言が法律上無効になる訳ではありませんが、遺留分は、遺言よりも強い権利を持っていると言えます。

相続人ごとの遺留分

民法上、遺留分が認められているのは「配偶者」「子どもや孫などの直系卑属」「直系尊属」です。兄弟姉妹は認められていませんので注意してください。

では、それぞれの具体的な遺留分割合について確認していきましょう。
「だれが遺産を相続するか」で全体の遺留分や個別の遺留分割合が異なるので、下表を参考にしてください。

相続人 全体の遺留分 各相続人の遺留分
配偶者 子ども 父母
配偶者のみ 2分の1 2分の1 - -
配偶者と子ども 2分の1 4分の1 4分の1 -
配偶者と父母 2分の1 3分の1 - 6分の1
子どものみ 2分の1 - 2分の1 -
父母のみ 3分の1 - - 3分の1

なお、遺留分侵害額請求を行使するためには、以下のような時効があるので十分注意してください。

時効を迎える前に速やかに対応する必要があります。

「遺言執行者」を指定すると安心

遺言が相続人たちに公表されるときには、遺言者はすでに他界しており、遺言書の通りに相続が行われているかを確かめることができません。

そこで、自分の遺言書通りに相続手続きがされるように、遺言者は「遺言執行者」を指定することができます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を執行する権利・義務がある者のことをいい、いわば遺言者の代理人という立場にあります。

遺言執行者がいない場合は相続人が手続きをする

遺言執行者を指定するかどうかは遺言者の自由なので、指定されていないこともあります。その場合は相続人が遺言内容に従って相続手続きを行います。

しかし、相続人同士の関係性が良好であるとは限らず、不仲というケースも珍しくありません。
さらに、遺言書の内容に不満を抱いている相続人がいると遺産相続はこじれるばかりで、遺言内容を正しく実行することが困難になってしまいます。

このように、遺言執行者を指定しない場合は、相続が希望通りに行われない可能性もあります。相続人の負担も大きくなってしまうことから、遺言執行者を指定することをおすすめします。

遺言執行者は「法人」を指定するのがおすすめ

遺言執行者には、遺言執行を適正に行うために、預貯金や有価証券、不動産などについて専門的な知識を有している者が適しています。

また、特定の相続人と関係があると不公平になる可能性があるため、公正・中立な立場から手続きを行えることが求められます。こういった条件を満たすために、遺言執行者には銀行や弁護士法人といった「法人」を指定することをおすすめします。

「家族・知人や弁護士個人でもいいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、相続の発生時に遺言執行を遂行できない状況になっている可能性があります。遺言執行者の高齢化や体調不良等が想定されるためです。
しかし、銀行や弁護士法人といった法人を指定しておけば、こういったリスクを回避することができます。

遺言書の効力や種類を理解して相続トラブルを防ぎましょう

遺言書は、「相続分の指定」や、「遺産分割方法の指定」など、遺言者の希望を記すことができる大切なものです。主に、自筆証書遺言と公正証書遺言が活用されていますが、より遺言書の有効性を高めるには公正証書遺言を選ぶと良いでしょう。

また、遺産分割が自分の希望通りに行われるために、「遺言執行者」を指定しておくことをおすすめします。その際には、「法人」の遺言執行者を指定することで、担当者不在といったリスクを回避することができます。

銀行では預貯金はもちろんのこと、有価証券や不動産についてもワンストップでご相談できることがほとんどです。困ったときは、まず信頼できる地元の銀行に相談してみるといいでしょう。

八十二銀行からのお知らせ
遺言書のご相談は八十二銀行へ

八十二銀行の「遺言信託」では、遺言書の作成に関するご相談・遺言書の保管・相続発生時の執行を行います。お客さまの財産内容やご家族状況を踏まえ、お気持ちに寄り添った遺言書の作成を専門担当者がお手伝いさせていただきます。是非、ご相談ください。

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監修者

宮川 真一

税理士
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。
現在は、イセヤマグループの財務経理を担当しつつ、株式会社みらいパートナーズのM&Aアドバイザーとして、また税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。

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